• 『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く
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2021.03.20

『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く

『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く


“柱” への共感

また一方で、今回の映画のヒットから見えることとして、ツイッターでの映画を観た方の反応などを見ると、炭治郎が所属している鬼殺隊隊員(主に柱)の生きざまにも共感している人が多いように見えます。

圧倒的な強者である鬼と戦う、鬼殺隊という弱者である側の組織において、その隊員は常に死と隣り合わせにいます。そういった組織において、作中で強調されている姿勢は、「大切な人への想い」と「後の世代につなぐこと」です。鬼に関しては、人だった過去の「哀しさ」を描くのですが、弱者であり人である鬼殺隊隊士は、過去から受け継いだ「想い」と未来に「つなげる」ことに力点を置いた彼らの判断を描いています。

基本的に「サヴァイヴ系」の物語では「今、生き残るためにどうするか」ということを描くのですが、『鬼滅の刃』の場合は、鬼舞辻無惨が千年くらい生きているという設定で、同じくらいの時間を鬼殺隊は鬼舞辻との戦いに費やしてきている点が描かれています。そのためか、隊士たちは、いかに次の世代につなぐかということを常に意識しています。柱で最年長の悲鳴嶼行冥が二十代後半であるという設定に代表されるように、基本みんな若くして死ぬということが前提になっているので、その中でどういう風に生き、死ぬか。鬼殺隊の登場人物たちは常に考えています。ここがこれまでの作品とは違う、キャラクターたちの意識があるように思われます。現実では皆が皆このように尊く生きられないと思うのですが、そこに人々が共感している、ということに私は興味を持っています。

鬼殺隊では幹部であり強者である「柱」が、自分より弱い立場の者を(命を投げうってでも)守ることを当然のことと考えています。映画公開後に配信されたPVにおいて炎柱である煉獄杏寿郎が「俺は俺の責務を全うする!!」というセリフを放ちますが、この「責務」とは母から受け継いだ「弱き人を助けること」です(コミックス第8巻64話「上弦の力。柱の力」)。そして、この考えは「弱き人」がやがて「強き者」になり次の世代を支えるという確信のもとに成り立っています。
このシーンに多くの人は共感し、作品や煉獄杏寿郎というキャラクターに感動し、何度も劇場に足を運ぶのであると考えます。

弱者側の人が強者である鬼と戦う『鬼滅の刃』では、その圧倒的強者な鬼に対して複数人の隊士で戦うという点が、一部の例外を除いて統一されています。基本的に少年漫画の場合、敵側の強者「1」に対して味方側が最初は複数人で戦っていても最終的に強者「1」のみ(多くの場合は主人公)になっていき、一対一のバトルが描かれる展開が多いですが、この作品では特に『無限列車編」以降、基本的に集団の隊士VS1匹の鬼の戦いを徹底して描いています。鬼側が複数いるときもありますが、基本的にその場合でも多数の「人」対1匹の鬼という戦い方をしている。これは最終決戦でもそうで、最後まで主人公が一人の強者となることを描かなかったというところに私は作者の方のこだわりを感じています。基本的に人は弱者である。その弱者が集団でどう強者と戦うのかというときに、「想い」が重要になってくる。最終巻発売時の新聞広告において「想いは不滅。」というフレーズが用いられましたが、この弱者が「想い」をつないで目的を達成する点に幅広い世代、多くの人びとが感動したのでしょう。そして、それは明らかに世相とも関係があります。

アニメージュプラス編集部