• 【2022年アニメ総括】『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』注目すべきTVアニメ
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2022.12.31

【2022年アニメ総括】『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』注目すべきTVアニメ

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』キービジュアル(C)創通・サンライズ・MBS


【何気ない日常描写の追求が現在のアニメの目標に】

藤津 2022年の思わぬ拾い物といえば、中国で制作された『時光代理人-LINK CLICK-』。先に中国で配信された作品を日本で放送したのですが、これがかなりおもしろかったんですよ。

編集長 これから第2期があるそうですね。

藤津 写真の中に入って過去を見に行くことができる男2人のコンビの話ですが、単純に「中国のアニメも出来がいいね」ということではないんです。監督はハオ・ライナーズ(絵梦アニメーション)で知られた李豪凌さんですが、キャラクターデザインは韓国人のINPLICKさん、美術監督は丹治匠さんなので、日・中・韓の合作のようなスタッフです。東アジアの中で“オタク”的な感覚って近いから、意外とこういう試みは可能性がありそうと実証された感のある作品でした。
あとオリジナルで気を吐いたといえば『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』ですね。

編集長 あれは正直ビックリしました。なぜ今このタイミングでこんな作品が、という感じで(笑)。

藤津 令和に蘇る昭和末期みたいな(笑)。稲垣隆行監督のお話だと、最初から “おもしろ” を狙ったわけではなくいろいろな要素が組み合わさった結果、ああなったということらしいんですよね。
あと『ヒーラー・ガール』も設定が独特ですが、ミュージカルのシーンがたくさんあったり、ひとり原画の回が多く、丁寧に作ろうという意識を感じました。

同じような丁寧さで言うならキャラクターデザインのセンスが光る『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』もありました。服の皺や影なし作画がいい感じでしたよね。センスという点でいうと、、原作ものですが『ぼっち・ざ・ろっく!』も演出の緩急、ライブシーンの見せ方、ドラマの語り方など多彩な画面をセンスよく見せていました。

編集長 『Do It Yourself!!』は、シルエットで見せる感じでしたね。

藤津 そうですね。『ぼっち・ざ・ろっく!』は表情変化に凝っていて、特に評判の第8話が良かったですね。前半のライブシーンで「緊張して失敗するけれど、ぼっちちゃんがギターで1発決めると流れが変わる」という展開をまず “音” でしっかり表現する面白さ、続いて打ち上げの居酒屋に行く場面は日常系アニメの面白さがあって。最後に「一緒にがんばろう」と虹夏と話をするところは、ほぼ2人でお店の前に立っているだけのミニマムな画面で、切り返しだけで見せていく演出の緊張感があった。一粒で3度美味しい感じでした。
それから『その着せ替え人形は恋をする』と『明日ちゃんのセーラー服』が同時期(2022年1月放送開始)に好評を博したのも面白かったですね。女の子の可愛さをフェティッシュに描くところに力を入れたものが並ぶなぁ、と(笑)。

編集長 ああ、言われてみれば確かに(笑)。両作とも原作が既に人気作でしたが、アニメ化でさらに跳ねた印象があります。

藤津 両作を観ていると、何でもない日常を丁寧に描くことが今のアニメ表現のひとつの目標値になっているのかな、と感じさせられます。
しかし不思議ですね。80年代には「あの話数はバトルや派手なことが何もなくて、良いんだよ」とか言っていたわけですよ。例えば『超時空要塞マクロス』の第4話「リン・ミンメイ」とか、あるいは『魔法のスターマジカルエミ』のOVA「蝉時雨」みたいな、何も起きない普通の一日の話で。

編集長 言葉が悪いかもしれませんが「箸休め」的な感じ。安定した本線があるからこそ、逆にそういうエピソードが輝いて見える一面もありましたね。

藤津 当時はTVアニメらしからぬ変化球という認識だったものが、京都アニメーションの高精細な作画などを経た上でここまできたか……というのはオジサンとしては感慨深いですね(笑)。
▲精緻な作画でなにげない日常を輝かせた『明日ちゃんのセーラー服/(C)博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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