• 【2022年アニメ総括】『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』注目すべきTVアニメ
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2022.12.31

【2022年アニメ総括】『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』注目すべきTVアニメ

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』キービジュアル(C)創通・サンライズ・MBS


【TVアニメの“存在理由”が問われた】

編集長 あらためて、2022年のTVアニメ全体を振り返っての印象を聞かせていただけますか。

藤津 やはり「TVと配信」という話にならざるを得ないと思います。2022年は “ネットフリックス・ショック” 的な話も広まりましたが……。

編集長 ネットフリックスの加入者が減少し株価が下落したことが明らかになって。東洋経済オンラインが「ネットフリックスが日本でのアニメ製作を縮小する」と報じましたね。

藤津 これは書き方が難しいけれど……ネットフリックスはネットフリックスで確かに、いろいろな事業の再構築を考えるだろうと思いますが、それって今作られているアニメの中のごく一部の作品に関することなんですね。
実際、オリジナル企画がいくつか潰れるのかもしれませんが、今後、アニメが配信中心に展開していくこととは別問題だと僕は感じています。日本動画協会が11月に刊行された「アニメ産業レポート2022」の中でも、松本淳さんが「配信はもうアニメビジネスのメインウインドウになっている」とはっきり書かれています。東洋経済の記事では「現場にはTV回帰の声もある」と書いていましたが、実際には「TV回帰」ではなく、配信ありきはもう揺るがない前提で、そこにTV放送をどう組み合わせるかというフェイズに入っている。

もちろんTVが依然として日本では最大の拡散力を持つメディアで、その優位性は基本的には揺るがないとは思います。その拡散力を、配信前提のアニメの宣伝戦略の中にいかに組み込むか。今年は本当にTVアニメがTVアニメである理由がビジネス的な側面から問われ始めたということですかね。

編集長 現時点で期待する2023年の新作はありますか。

藤津 映画だと、試写で観させていただきましたけれど『金の国、水の国』は丁寧にできていて良かったですよ。原作も読んだ上で「ああ、これをこうやってまとめたか」と感じました。ひとつ言うなら、原作以上に主役の男が大泉洋さん的な雰囲気が強く仕上がっていて、これは現代のヒーローとしてありだなと(笑)。あと『BLUE GIANT』も未完成のものを観ましたが、かなりおもしろかったです。
▲岩本ナオ原作の名作コミックを丁寧にアニメ化した劇場作品『金の国 水の国』/(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会

個別の作品として挙げられるのは今のところそのくらいですが、映画もTV・配信も作品の層の厚さは非常に増しています。かつての劇場版レベルのクオリティがTVシリーズで楽しめるようにもなっている一方で、アイデア勝負の作品、ローコストだけどキャラが可愛くて面白い作品も出てきている、この面白い状況をこのまま維持してほしいな、というのが来年に期待することですね。

編集長 ありがとうございました、またいろんな驚きや楽しさと出会える1年であると良いですね。
藤津亮太(ふじつ・りょうた)
1968年生まれ。アニメ評論家。新聞記者、週刊誌編集部を経てフリーライターに。アニメ・マンガ雑誌を中心に執筆活動を行う。近著は『アニメと戦争』(日本評論社)、『アニメの輪郭 主題・作家・手法をめぐって』(青土社)、『増補改訂版「アニメ評論家」宣言』。

治郎丸慎也(じろまる・しんや)
1968年生まれ。1991年徳間書店に入社、月刊誌・週刊誌の編集部などを経て、2020年よりアニメージュプラス編集長に。

アニメージュプラス編集部

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