洋画を観るときに字幕派、吹き替え派の論争はよくある話。それぞれのメリットがあるので、結局は好みで……という結論になることが多い。
普段は字幕で洋画を観る。そんな字幕派でも吹き替えで見た方が面白い映画もある。
クリント・イーストウッドの山田康雄や、ジャッキー・チェンの石丸博也など、テレビ放送で洋画に出会った可能性が高く、吹き替えの声が馴染み深いという意味で、おすすめするパターンもあるが、今回は吹き替えである必要性を感じた映画を紹介したい。
『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズ監督が脚本も手がけ、第86回アカデミー賞で脚本賞を受賞した『her 世界でひとつの彼女』(2013)だ。
妻と別れた主人公のセオドアが、最新のAI(人工知能)型OSサマンサと会話を交わしていくうちに、だんだん惹かれていく物語。サマンサは、Siriのように声だけの存在だが、ユーモラスで、純真で、セクシーで、誰よりも人間らしく話しかけてくる。一緒に過ごす時間はお互いにとっていままでにないくらい新鮮で刺激的になっていく。果たして声だけの彼女に人(セオドア)は恋をするのか――という話。そう、どんな作品よりも声が一番大切な映画なのだ。
スカーレット・ヨハンソンが演じるサマンサも魅力的なのだが、吹き替えによりサマンサの言葉が理解できることで、ニュアンスや気持ちがダイレクトに心に響いて、浸透してくる感覚がある。それが作品に没入させる大切な要素になっている。
その大切な声は、『新世紀エヴァンゲリオン』で綾波レイを担当した声優の林原めぐみが演じている。
英語より日本語の方が聞き取りやすい方は、ぜひ日本語吹き替え版で観ていただきたい。