• 手塚治虫の無茶苦茶すぎる現場がアニメ作家を育てた「虫プロ」の時代【丸山正雄のお蔵出し】
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2023.08.26

手塚治虫の無茶苦茶すぎる現場がアニメ作家を育てた「虫プロ」の時代【丸山正雄のお蔵出し】

左から杉井ギサブローさん、丸山正雄さん、高橋良輔さん (C)浦沢直樹/長崎尚志/手塚プロダクション/「PLUTO」製作委員会

プロデューサーとして幾多のアニメ作品を手掛けてきた丸山正雄さんが毎回登壇し、これまで手掛けてきた作品の上映と縁のゲストを招いたトークショーを行う、シリーズイベント《丸山正雄のお蔵出し》。
8月5日(土)には、丸山さんと虫プロ時代のからの盟友である杉井ギサブローさん、高橋良輔さんをゲストに招いてのイベント第4弾「手塚治虫と虫プロ」篇が開催された。その模様をお伝えしよう。

丸山さんは、手塚治虫が設立した虫プロダクションに1965年に入社してアニメ業界でのキャリアをスタート、1972年に独立してアニメ制作会社「マッドハウス」を設立してプロデューサーとして数多くの名作を世に送り出し、2011年には新たなアニメーションスタジオ「MAPPA」を、さらに2016年は「スタジオM2」を設立し、今年82歳を迎えるも現役で活躍中のレジェンド的存在だ。
最新プロデュース作となる『PLUTO』は、漫画家・浦沢直樹が手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』の中でも絶大な人気を博したエピソード「史上最大のロボット」をリメイクし現代に蘇らせたコミックスが原作で、10月26日からNetflixで世界一斉配信される。

《丸山正雄のお蔵出し》では『PLUTO』にちなんだ特集が3回に渡って企画されており、今回の「手塚治虫と虫プロ」はその第1回目で丸山さん自身にとって “原点” といえる手塚治虫が設立したアニメスタジオ「虫プロダクション」を振り返っていく。
ゲストの杉井ギサブローさんはTVシリーズ『タッチ』(1985年)や映画『銀河鉄道の夜』(1985年)を手掛けた巨匠。そして高橋良輔さんは『太陽の牙ダグラム』(1981年)、『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)というリアルロボットの歴史に燦然と輝く傑作の産みの親であり、お二人ともに丸山さんと虫プロで苦楽を共にした仲間である。
▲左から丸山正雄さん、杉井ギサブローさん、高橋良輔さん

◆貴重な上映作品◆

今回上映されたのは、1966年放送『W3(ワンダースリー)』第51話「地底のクジラ」、1967年放送『悟空の大冒険』の未放映第8話「ニセ札で世界はまわる」、1968年放送『リボンの騎士』第46話「ふしぎの森のサファイヤ」の3作だ。
「地底のクジラ」は、銀河連盟から派遣されたW3のボッコ、プッコ、ノッコと星真一少年が、金色のクジラを捉えて一儲けを企む興行師と対決するストーリーで、高橋さんが演出、丸山さんが演出助手としてクレジットされている回。
「ニセ札で世界はまわる」は杉井さんが総監督を務めた『悟空の大冒険』の第8話として制作されたものの、放送前にお蔵入りとなった “幻のエピソード”(2004年のDVD BOX発売時にフィルムが発見され収録された)。演出は故・出崎統で、三蔵たちをニセ札に変えた謎の女と悟空と沙悟浄が国境を越えた奇妙な追跡劇を繰り広げるという内容の、シュールなスラップスティックコメディだ。
「ふしぎの森のサファイヤ」は現状残っている記録の中で唯一、丸山さんが「脚本」としてクレジットされている作品。リボンの騎士ことサファイヤを陥れようと企むX連合の手先・オババが、彼女に放火犯の濡れ衣を着せるというスリリングなストーリーが繰り広げられるが、丸山さん自身は「『リボン』で脚本を書いたなんて、まったく覚えていないですよ」とのこと。

あらためて上映作を観た丸山さんは「覚悟はしていましたが……酷いもんですね(笑)。もう少しマシに観られるかと思っていたけれど。日本のアニメーションは50年前、これだったんです、というのを確認するにはよい機会になったかな」と自嘲的に語ったが、いずれも日本のTVアニメ黎明期を飾った貴重な作品であり、それを劇場のスクリーンで観られるのは非常に貴重な機会だと言える。
特に「ニセ札で世界はまわる」は、当時放送禁止になった理由が何となく想像できるほど自由奔放な実験精神やアナーキーな風刺、そして過激なまでのサービス精神が感じられる尖った内容で、場内では何度も笑い声があがっていた。

※手塚治虫の「塚」は旧字体、出崎統の「崎」は「たちざき」

アニメージュプラス編集部

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