■フルートと壮大なコーラスの展開は楽曲の聴き所――シキさんも作詞・作曲をする上で、ゲームをプレイしたりアニメのシナリオを読んだりしたのですか?シキ:はい。でも視覚情報が大事だと思ったので、インスパイアの源は大半がゲームの情景でした。森とか海があって、そういう「ザ・自然」みたいな景色が基本にあって、その自然と共にライザたちの物語が進んで行くという印象だったんです。それに話数が進むごとに意味が深まっていく歌詞にしたいと思っていたので、基本となる音楽は変わらずいつもそこにある自然をイメージしたものに固定したほうがいいなと思って。それでイントロも、あの世界の情景がそのまま感じられるように意識して作りました。
――サウンドはバンドだけじゃなく、フルートの音とか民族っぽいフレーズも入っていて、しっかりファンタジーが感じられますね。関根米哉:昔からのアニメオタクとしては、作品とリンクした部分が少し入っているだけもワクワクするので、主要キャラクターの一人であるクラウディア・バレンツがフルートを吹くという設定があったので、その要素はぜひ入れたいと思いました。それにエンディングテーマの中にキャラクターをイメージさせるものが入っていたら、最後の最後まで楽しんでもらえるなと思ったので。
Aki:キーボードで言うと、イントロとソロ以外は伴奏に徹しつつ、ただの伴奏にはならないようにメロディアスな部分も残すように意識しました。間奏のピアノソロは、美しさを残しつつ、ちょっとワクワクした感じも入れることを意識して考えました。
――曲の最後が、合唱みたいに壮大な感じになっていて、あの大団円感がいいですね。シキ:いいですよね(笑)! コーラスを入れるのが大好きで、ここぞとばかりに入れました。
Aki:あれは何人くらい入れたんだっけ?
シキ:15~16人?
――その人数分、ひとりでコーラスを録ったわけですよね。シキ:コーラスを積む工程が楽しくて、作る時はワクワクしているんですけど、いざ録る時は「ちょっと多かったかな」って(笑)。
――そのラストのコーラスの展開は、どういうイメージだったのですか?シキ:最後に〈思い出した 揺るがない始まりを〉という一行があるんですけど……ライザたちがいつか別々の道を歩む時、一緒に観た景色や自分たちが大事にしていた思いや物に出会えた瞬間のことは、ずっと思い出すものだし、自分の道を進めば進むほどその尊さは増して行くと思うんです。ここは聴いた人それぞれがどんな解釈をしてもらってもいいんですけど、作った私たちとしては、ライザたちは同じ方を向いているけど、立っているのは全員違う場所みたいなイメージです。進みながら思い出しているみたいな。
関根米哉:エンディングの映像で、ちょうどライザが走り出すところでここが流れます。
■ライザとシキの共通点!――歌詞を書く上で、他に印象的だったシーンやセリフはありますか?シキ:直接歌詞に反映されたわけじゃないですけど、ライザが「やっぱり忘れるとか諦めるのはもったいないよ」と言うシーンがあって、ゲームをプレイした時にそれがすごく印象に残りました。忘れたり諦めたりしたほうが楽になることはたくさんあるのに、脇目も振らず前しか向かないライザに、本当に毒の無いポジティブな主人公像を感じました。その強さがライザの魅力だし、それが周りを惹きつけていると思いました。それで後ろ向きの部分が全く無いと言うか、一瞬感じさせてもそれをすぐ払拭するような、強さがある言葉を使いたいなと思いました。
あと、さっきクラウディアのフルートの話が出て来ましたけど、タイトルの「アロー」もクラウディアが持っていた弓矢から来ています。始まった瞬間からその先の未来まで、絶対に貫いてやるという強さがライザにはあって、その真っ直ぐさはまるで矢のようだと思って。また、それに憧れるクラウディアがいて、ライザと共にいろんなものを見つけていく仲間がいる。その関係性は、自分たちとも共通する部分があるなと思いました。同じ方向を見て、何があっても辞めずに頑張って行こうねというマインドの部分で。だからライザ目線と言うか、第三者目線ではなく、自分たちのこととして言っているような目線で歌詞を書きました。
――ライザたちは、それぞれのやりたいことを見つけて突き進む。皆さんも音楽とかバンドという、やりたいことを見つけて突き進んでいる。シキさんはやっぱりライザっぽいですか?関根米哉:芯の強いところは似ています。有無を言わさず周りを巻き込むところが特に似てますね。
――ライザのようなポジティブさはどうですか?関根米哉:そこが一番違うところです(笑)。でもポジティブに生きようとしているよね。
シキ:やっぱり暗い部分を知らないと、明るい部分は歌えないと思うので!
Aki:陽キャっぽくもあるし陰キャの部分もあって、その二面性がシキの魅力かなって思います。
【後編】【Awkmiu】が語る。EP「アロー」、17歳の頃、そしてこれから。