• アニメ評論家・藤津亮太が語る「2023年劇場アニメ」の注目すべき豊かな成果
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2024.01.12

アニメ評論家・藤津亮太が語る「2023年劇場アニメ」の注目すべき豊かな成果

2023年劇場アニメの大きな収穫のひとつとなった『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(C)映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会


◆好調のシリーズ最新作、そして3DCGの注目作◆
――そのほかで、藤津さんご自身が印象に残った映画/劇場作品は?

藤津 端からあげていくと……というか、印象的な作品がありすぎて難しいですよね、今年は。

――『君たちはどう生きるか』(7月14日公開/宮﨑駿監督)はムーブメントとして大きすぎるので、一旦おいておくとして(笑)。

藤津 話題になったという意味では、立川譲監督が『BLIE GIANT』で、人気漫画原作ではあるけれどTVシリーズとは紐付いていない、劇場のためだけに作られた映画として興収10億を超えるヒットを記録し、そのすぐ後に『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(4月14日公開/立川譲監督)で『コナン』映画で初めて興収100億を超えた。これは印象的な出来事でしたね。

――立川監督の活躍は確かに特筆ものでした。今後の作品にも注目したいところです。

藤津 そのほかシリーズものでいうと『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』(3月3日公開/堂山卓見監督)がなかなかに尖った作品でした。「ユートピアに見えるディストピア」に行くというお話で面白かったけれど、子どもには怖かったのでは? という(笑)。でも、ある意味『ドラえもん』らしい映画でした。

――劇場版ならではの“毒”を入れてくる感じですね。

藤津 あとは『クレヨンしんちゃん』の映画も今年は3DCGでした。

――『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』(8月4日公開/大根仁監督)ですね。

藤津 これも、試みとしては面白かったです。3DCGであのくらい『しんちゃん』ができるなら、他にもいろいろできそうだなという可能性が感じられました。そして3DCGといえば『アイドリッシュセブン』ですよね。『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』(5月20日公開/錦織博・山本健介監督)が興収20億を超えるというのは凄いな、と。

――〈DAY 1〉〈DAY 2〉の2バージョン公開という仕掛けも効いていました。

藤津 半分にするとそれぞれ10億ですが、それでも十分に凄い。さらに凄いと思うのは、その成果を見てなのかどうかわかりませんが、突如『うたの☆プリンスさまっ♪』がリバイバル上映をかけてきて(『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスターリッシュツアーズ』の発声OK上映・ドルビーシネマ版上映)、そちらもしっかり興行成績でランクインするというのも興味深かったです。

2016年以降に顕著になった傾向と思いますが、今は映画鑑賞がライブ感覚というか、アニメにおける「ライブ」とは劇場に行くことだという理解が進んだ結果だなと感じます。『BLUE GIANT』も音楽シーンが長くて体感度が高かったですしね。2時間の映画のうち30分近くが演奏シーンでしたし。

――それで言うと『劇場版ポール・プリンセス!!』(11月23日公開/江副仁美監督)も同系統の作品ですよね。
▲『劇場版ポールプリンセス!!』 (C)エイベックスピクチャーズ/タツノコプロ/ポールプリンセス製作委員会

藤津 そうですね。しかも『ポール・プリンセス!!』は「ライブのシーンだけ応援できます」「全編応援できます」の2種類の応援上映があるんですが、通常上映を探して観に行くのが大変でした。

――通常上映が逆に回数が少ないんですか(笑)。

藤津 観やすい時間帯は応援上映が多かったですね、CGディレクターの乙部善弘さんが本作の企画のスタートだったそうですが、確かにポール・ダンスという題材は3DCGの強みが活かされる。というのも、舞台は基本ポールの周りだけだから表現しなければいけない空間が狭いんですよ。それなら、リソースをダンスの動き+αの演出に集中できる。動きもカメラワークも、これは手描きでは難しいだろうと思わせて、3DCGと感じるような驚きや面白さがありました。

アニメージュプラス編集部

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